大阪の人に大阪の良さを発信
地域に根差す「大阪のええもん」を集めたセレクトショップ
天満天神MAIDO屋

　　　　　　　　　▲店主の赤尾江里子氏

 
 

天神橋一丁目から天神橋六丁目まで南北2.6 km、600の店舗が軒を連ねる日本一長いアーケード商店街である天神橋筋商店街に2014年4月に登場した「天満天神MAIDO屋」。「大阪天満宮」や上方落語唯一の寄席「天満天神繁昌亭」の近くとあり、商店街の中でも観光客で賑わうエリアである。

観光スポットもあるものの、周辺には住宅や企業が圧倒的に多く、来客のほとんどが観光客以外の地元客。観光客に向けた大阪土産の店ではなく、大阪の人に大阪の優れた商品を知ってもらいたいとう思いで店づくりを行っている。

 

 
店主の赤尾氏は天神橋筋商店街で1946年より商いを続けている企業の3代目。最初は文具の製造・卸売りから始まり、父の代ではトロフィーの販売、そして赤尾氏の代で「イワイザケドットコム」というワインやミニ酒樽など各種お酒の容器に名入れができる通販サイトを立ち上げた。
同商店街はオフィス街に近く、平日は周辺企業の会社員で賑わうが日祝は休みの店が多く、人通りもひっそりとしていた。だが、2006年に先述の「天満天神繁昌亭」がオープンし、また隣接する「大阪天満宮」の様々な祭事・神事を目的に休日でも商店街を訪れる人が増えたにも関わらず、ほとんどの店がシャッターを下ろしている。「せっかく商店街に足を運んでくれたのにシャッター通りでは心苦しい。また訪れたいと思ってもらえる街にしたい」との赤尾氏の想いから、本業の通販事業に加え、大阪産・大阪製に特化した「MAIDO屋」のオープンに乗り出した。

 
商品はすべて大阪で製造されたものであるが、単なる量産品ではなく作り方や原材料にもこだわった商品を積極的に取り入れている。一番の売れ筋はリーズナブルで大阪では誰もが知るお菓子「満月ポン」。素朴な材料と昔ながらの製法の安心感で、子供のおやつに買っていく人も多いという。飲み物を注ぐと万華鏡のようにキラキラと輝くカッティングが際立つグラス「天満切子」はひとつひとつ手作業で作っているため、同じデザインでも色や柄、サイズが微妙に違う。好みのものがあれば入手しておかないと次の入荷が未定という事もあり、その時々の出会いを楽しみにしているファンも多い。
オリジナル商品としては、来客からの要望で古地図を復刻した商品や店の看板である大阪弁提灯シール、活版ポストカード、河内木綿のリバーシルバッグ、だし巻き卵が自慢のお弁当屋が大阪の素材を元に考案した「だしまきだし」など妥協せず全て大阪にこだわった商品を開発。オリジナル商品の一部は卸にも対応している。
 

 
店の入り口に掲げられている提灯は天神祭で町内に一斉に吊るされる提灯も手掛けている安政5年創業の老舗「提灯舗かわい」が制作したもの。天神祭の際は各町によって違う象形文字のような文字が描かれた提灯が会話の糸口となり、コミュニケーションが生まれるのが昔ながらの光景。MAIDO屋の提灯には「ちょける」「ほたえる」「すかたん」などのコテコテの大阪弁がひらがなで書かれているが、道行く人の多くが提灯を眺めたり、立ち止まって熟視したり、指さし、会話しながら楽しげに通り過ぎていく。店の看板である提灯が天神祭の提灯と同様の役割を果たす光景に、単なるお店ではなく大阪の歴史やものづくりの良さを広めたいという店長の想いが道行く人に伝わっていることに感動を覚える。
 

 
MAIDO屋では、月2回ベースでさまざまな趣向のイベントを主催している。取引のある企業や地元施設の協力のもと、「カタシモワイナリー(柏原市）」での畑作業イベントや「茨木養蜂園（交野市）」での採蜜体験など製造現場での体験・見学イベントをはじめ、店内で販売している「だしまきだし」を使ったポリ袋料理教室、ご近所の大阪天満宮の天満天神お伽衆による「天満天神七不思議巡り」など趣向を凝らしたものばかり。赤尾氏が自ら体験したい、興味があるものを企画しているそうで、今までにない、ここでしか経験できないイベントが満載である。
 
店づくりや商品選び、イベントなどすべての事に共通しているのが「大阪の良さや魅力を伝えたい」。いたるところに設置されているPOPからもその想いが伝わってくる。今後も天神橋筋商店街を拠点とし、商品の販売だけではなく大阪の情報発信基地として驚きと感動のある大阪製品を発掘していく。