“暮らしにちょうど良い”日本の生活道具を提案するお店
暮らしの道具 松野屋
株式会社松野屋 代表取締役 松野 弘さん
お店を訪れた人が、自分のライフスタイルを見つけられる
…そんなお店を訪ね、お店作り・売り場作りについて伺った。
自然素材を主として作られる生活道具を扱う荒物問屋、松野屋。「荒物」とは、ほうき、ちりとり、カゴ、ざるなど、日本の昔ながらの家内制手工業で作られる簡単な作りの日用品のことを指す。株式会社松野屋・代表取締役の松野弘さんは、日本全国を歩き回り、作り手と出会いながら、そうした自然素材の暮らしの道具を仕入れている。
松野屋は、1945年に松野社長の祖父が鞄問屋として創業。その後、松野社長の代から実用性の高い雑貨や道具の扱いを始めた。そこにはアメリカの“ヘビーデューティ”(※)の考え方や、民芸そしてプロユースの道具などへの共感があったという。「丈夫で長持ちする日本の荒物は、昔ながらのものづくりの良さが生きた本物の実用品です」と語る松野社長。それらは大量生産品ではなく、美術工芸品また民芸品でもなく、町工場や農村の職人が作る素朴な暮らしの道具なのだ。それらは一見、無骨だが、作りが頑丈で使うほどに手に馴染み、また経年変化も楽しめる。「作られる現場を自分の目で確かめながら、作り手の気持ちが伝わる道具を、消費者にお伝えしたい」という。松野屋では、職人や町工場が無理をしない範囲でできるオリジナル商品も企画開発し、販売している。
●職人の手わざが生み出す「荒物」を、残し、伝え続ける
なるべく石油製品ではなく、また使い捨てにならず長く使えて楽しめ、しかも買いやすい価格の商品を提案している同社。「不便そうに見える昔の暮らしの道具も、使うととても便利で、いつでも暮らしに寄り添ってくれます」と語る松野社長。それらは若い人も年配の人も、全ての世代に訴求できる製品だ。そうした幅広い提案のできる“縦割り型の商売”を目指しているという。
今の時代に合う荒物屋として、「暮らしにちょうど良い」道具を提案してくれる松野屋。現在、日本橋馬喰町に卸売り専門店を、また谷中に一般向けの直営店「谷中松野屋」を展開している。卸専門店では、小売店の方が少数では仕入れにくい手作りの商品を、多品種を一度に見て買い揃えられるので、好評だ。「大量生産品でない、長い年月をかけて培われた手工業の製品は、用の美を備えながら、買いやすい値段で作られる物が多いですね。それらを残し、次世代に伝えて生きたいと思います」と松野社長は語っている。
(※)ヘビーデューティ:1970年代にアメリカで起ったムーブメントで、丈夫さに加えて機能性に優れたもの(=「ほんもの」)という思想に貫かれたものを志向する精神。
▲上は「ワラ釜敷き」。松野屋を経て欧米にも送られている。下は「布ぞうりスリッパ」。一足ずつ手作りされる
▲鞄職人でもある松野さんが作り出すトートバッグやリュック。丈夫で使い勝手がよく、作業バッグとして使ってもタフに受け止めてくれる
▲水まきや庭仕事に便利なステンレスのスコップ、高い所の掃除に活躍する「シュロはたき」等々。安全で機能的、自然な美しさのある製品
▲松野屋が栃木県から長年仕入れている定番人気商品の「和ぼうき」。80代のおばあちゃんとおじいちゃん亡き後、お婿さんと娘さんが後を継いで作っている
▲日本の手わざが生み出すざる・かご。台所まわりに買い物やお出かけ、物入れなど、用途に応じてさまざまに活躍してくれる
▲卸専門店では、小売店の方が少数では仕入れにくい手作りの商品を、多品種を一度に見て買い揃えられる
■「松野屋」のある街「日本橋馬喰町」とは?
隣の日本橋横山町とともに、日本を代表する日本橋の問屋街の中心をなす。江戸の昔から旅宿街、問屋街として栄えてきた。ファッション・服飾雑貨からインテリア関連雑貨、生活雑貨までさまざまな品物が集積している街。
[卸] (株)松野屋〒103-0002 |
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[小売] 谷中 松野屋〒116-0013 |
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